2023年3月8日(水)から3月10日(金)まで学術総合センター内 一橋記念講堂(東京都千代田区)にて開催された第27回 一般社団法人情報処理学会シンポジウム「インタラクション2023」にて、「手の接近及び多様な触覚刺激を識別する柔軟な触覚センサの開発」がインタラクティブ発表賞(PC推薦)を受賞しました。
情報処理学会「インタラクション」は人と人工物、および人工物を介した人と人のインタラクションに関する国内最大のシンポジウムで、1997年から毎年開催されています。本年は224本のインタラクティブ発表への投稿から、まず、1論文につき5名のチーフプログラム委員/プログラム委員が割り当てられ、35本(15.6%)のプレミアム発表が選定されました。その中から、発表当日にチーフプログラム委員団の巡回審査を経て7本(3.1%)の受賞が決定されました。
本発表は経営学部 岡夏樹教授が京都工芸繊維大学との共同研究の研究分担者として取り組んだ成果を発表したものです。発表内容は以下の通りです。
人と触れ合うことは相手との親しみを強めたり感情を伝えたり様々な効果があることが知られています。ロボットも人との触れ合いにおいて適切な反応を返すことができれば、それらの効果が得られる可能性があります。そこで本研究では、導電性シリコンゴムを電極として使用した薄く柔軟な静電容量方式の触覚センサを開発しました。このセンサの表面に人肌の柔軟性を持つ皮膚素材を貼り付け、様々な触覚刺激における静電容量の時系列データを収集し、LSTM(Long short-term memory)を用いて刺激の識別モデルを構築しました。その結果、9つの状態の識別において85.1%の正答率が得られ、撫でる、叩く、くすぐる等の皮膚素材に直接触れる刺激だけでなく、手の接近/離反も高い精度で識別できることが示されました。また、皮膚素材の表面を押す強弱についてもある程度の精度で識別することができ、人の手との接触においては圧力センサとしても機能する可能性が示されました。
本研究では深層学習を利用することで高い識別精度を達成していますが、経営学部ではデータサイエンスコースの新設(2024年度)に向けて、関連科目の充実を図っており、AI技術の急速な進展の原動力である深層学習については、演習形式で深層学習を学ぶ科目「実践人工知能」「機械学習」等を提供し、AIを使いこなせる人材の輩出を目指しています。